同じ空の下

 忙しさのピークだった田植えがひと段落して、いよいよやりたいことだらけ

 しかも、楽しい♪

 母が夏の野菜作りを楽しんでいたビニールハウスを半ば乗っ取って、あれこれと実験している

 今年こそはまん丸なコキアを育てたいと、芽出ししてから一つひとつポットに植え替えた  時期が来たら庭に定植させる

 ラベンダーエリアも作りたくて、庭の隅に唯一ある株から新芽を取って挿し芽にも挑戦している

 大先輩である母の知恵とYouTubeの情報をミックスさせながら、野菜の枝の仕立ても試している

 水没事件を乗り越えた野菜たちはよりたくましく(?)育っているんじゃないかと思ってしまうほど順調

 ナス科の苗のそばにネギを植えるといい効果が得られるというYouTubeの先生の教えを検証したくて、トマトとシシトウの近くに数本移植してみた

 ネギならいくらでもあるんだもの(関連 父の足跡

 念のために、母に「こういう理由でところどころにネギを植えてあるからね」と言っておいたんだけど、今朝見に行ったら1本抜かれて近くに転がっていた

 このくらいの“小ボケ”は想定の範囲内だけど(笑)

 「ふん!」と言いながら、また元のところに植えておいた

 ネギが強い野菜で良かった!

日々のあれこれ

 朝目覚めて、まず家の前の花畑を眺めるルーティン

 その日はそこが“水田”になっていた!

 起きたばかりで、一体何が起こっているのか理解するのに時間がかかった

 どうやら、奥の田んぼの水が溢れて、手前の畑に流れ込んできたらしい

 昨年から植え付けていた芝桜やマツバトウダイ(右手前)

 ビニールハウスの中に植えたトマトやきゅうりの苗

 芽が出揃いつつあったほうれん草をはじめとした葉物野菜、等々…

 頭の中で次々にバツがついていき、遂に真っ白になった

 いっそ泣きたいんだけど、いい年だしそんなことにもならない

 そこへいつもの作業のために甥っ子が到着した

 多分半泣きの顔で畑を指差し、声も出せずに口をパクパクさせている私を見てすぐに全てを察したようだった

 畑になってからずいぶん経っているところなので、水が溜まっても排水する経路がない

 そこで、用水から水を汲み上げるポンプを運んできて、近くの田んぼに流すように道を作ってくれた

 心ここにあらずで過ごした午前中…

 昼近くなったら水が大分引いた

 落ち着いてきたら、「植物だし、このくらいは乗り越えられるんじゃないかな」と思えてきた

 午後は後ろ髪を引かれながら出勤

 近所に住む幼馴染みのお兄ちゃん(60代)が心配して電話をくれた

 夕方近くなって甥っ子からLINEが入った

 写真とともに、「どうやら無事のようだよ」

 近所のお兄ちゃんもこの頃に見に来て「病気がつかなきゃいいけどな」って、ホッとしたように帰って行ったらしい

 一週間経って、芝桜もマツバトウダイも花盛りを迎えた

 今のところは野菜も順調に育っている

雑草まで元気なのは今後の課題として…

 ああ、私は今、強くて優しいものたちに囲まれているんだな

日々のあれこれ母の一世紀

 昨年、山のように生い茂った雑草の中に千本ねぎの株が幾つかあるのを見つけた

 味噌汁の具にするために何度か掘ったが、特に世話をすることもなく秋の終わりには雪の下に埋まっていった

 春になって、周りの雑草よりも早く青々と葉を伸ばし始めたのを見て、ふと「今年は大事にしてみようかな…」と思った

 何十年も前に、それまで勤めていた鉄工所をやっと退職できた父が一念発起し、冬のビニールハウスに電熱線まで敷いて出荷用に栽培し始めたのがこの千本ねぎだった

 米を作るだけでは生活していけない規模の米作農家だった我が家は、父が働きに出て、さらに母が中心となって野菜を作って出荷してやっと生活が成り立っていた

 色々な野菜を手掛けては、そつなくこなしていく母の姿を見ながら、頼まれると断れないタイプの父は、定年を過ぎてもなかなか退職できず、農業だけに専念できる日をずいぶん待ち焦がれていたようだった

 一時は大きな収入源になっていたねぎ栽培も、二人の体力の低下とともに断念せざるを得なくなった

 夏場に株を育てていた畑に残って野生化していたものも、年々掘り起こされては別の野菜が植えられていくうちになくなっていった

 ある年、田畑を引き継いだ甥っ子が昔の懐かしさもあって、それらの“残党”を移植したらしい

 でも、その後は手が回らずに、数年間雑草の中で耐え忍ばせる羽目に…

 やっと陽の目をみることになった千本ねぎたちは、久しぶりに株分けされて各所に植えられた

 その一部などは、かつての栄光を取り戻すかのようにビニールハウスの中に鎮座させることにした

 ねぎが苦手な母は、「どうしてそんなにねぎばっかり…」と、不満そうにしている

 「じいちゃんが大事にしていたねぎだからだよ」と言うと少し納得するものの、数日後にはまた苦情を訴えて来るんだろうな…