同じ空の下

 こちらへ来てまず思うのは、「空が大きいなぁ」

 晴れた日には、真っ青なお椀をすぽっと被せられたみたいに

 それでも、私の欲は飽くことを知らない

 朽ちかけた木蓮の大木のために前庭の日当たりが悪いのが気になっていた

 幹に大きな穴が空いていて、雪や風で倒れる心配が常にあった

 大きな葉は農作物の生育にも影響するほどの日陰を作り、秋の落葉で用水を詰まらせた

 そんな訳で、家族の同意…というか大賛成を得て、伐採に踏み切った

 腕に覚えのある息子や甥が、力と知恵を持ち寄って完遂してくれた

 おかげで、私の空は更に大きくなった

 樹齢50年以上の、もしかしたら“大先輩”

 人間の都合ばかり言ってごめんなさいね

 でも、大きな空に伴うたっぷりの日差しは、足下でひっそりと伸び悩んでいた小さな草花を一気に元気にしてくれた

同じ空の下

 北へは北上、南へは南下と言います

 南の地方に住んでいらっしゃる方、なんかごめんなさい

 北半球を上に描いた一般的な地図が要因だと思われますが、北へ北へと進むとグーグルマップの私の位置情報も、どんどん上へと移動して行きました

 フェリーに乗って、日本海をまっしぐらに北上しました

 新潟港から小樽港まで16時間半の旅

 早朝4時半に着港して、更に北上

 旭川市には午前8時半という、この一日は余裕をもっていろいろなことが出来そうな時刻の到着でした

 荷解きをしたり、母に食べさせたいと考えていた料理を作ったり、早速庭に手を入れて花を植える計画を立てたりと、目まぐるしい一週間を送りました

 遂に手にしたおのぞみの結末

 ここからは北海道での生活をメインに発信していきます

 庭いじりを楽しみながら

 気候の変化に戸惑いながら

 田舎暮らしの不便さを思い知りながら

 近くの観光スポットを訪れたりもしたいな

 よろしければ、今後もどうかお付き合いください

向こうを出発するときには、夜明けの大きな虹が見送ってくれました

同じ空の下

 「今回はクヨクヨしない!」と決めて、私が乗った飛行機は、幾つもの虹を飛び越えて進みました

 あと半年ほど

 感傷に浸っている暇などない

 仕事をしっかりとまとめ上げて、春の転機の準備をしなさい

 優しかったけれど、仕事に関しては厳しかった父からのエールのように

 今年も、北海道の夏の一部分を満喫してきました

 カラッと暑い昼間

 早い日の出と、ゆっくりの日の入り

 肌寒くて、羽毛布団を被って眠る夜

 まるで観光客のように、青い池や四季彩の丘などの観光地までちゃっかり回ってきました

 2週間を一緒に過ごした別れ際、母が昨年にも増して寂しそうでした

 7月から、ずっと楽しみに待っていてくれたこと

 いる間じゅう、頼りに思ってくれていた様子

 また、一人の時間が増える心細さ

 随分と歳を取ったんだなぁと、実感するばかりでした

 「あと半年だよ」と励まして、また日常が心のひだを平らにしてくれるのを待つしかありませんでした

 だから、なおのこと、私は昨年と同じ気持ちで戻るまいと決めていました(関連 繋がった空の下で

 だって、ここからやることがたくさんあるんだもの

 晴れ晴れとした気持ちで、第二…、いや第三かも…の人生を始められるように、気合を入れていかなくちゃ

 とりあえず、戻ってすぐの一般ゴミの日に、7月が過ぎるともう使うことのない仕事の用具を、幾つか処分しました

そして、羽田空港には、ゴジラも上陸していました