同じ空の下

同じ空の下,日々のあれこれ母の一世紀

 「同じ空の下」

 これは、大好きだった祖父が亡くなったときに、葬儀に駆けつけられない自分を慰めた言葉です。北の地平に近い空を見つめて、あの青のどこかは、静かに眠っている祖父を見下ろしている空に違いないと。ここでの祈りは、すぐそばにいるのと変わらず届いているはずだと。

 葬儀に向けて電報を打ちました。

 「遠く離れていても、同じ空の下。みんなでおじじの冥福を祈っています。」

    *「おじじ」は、うちの子どもたちをはじめとしたひ孫たちの、祖父の呼び名です。

 今年、会いたい人への思いが空回りするばかりの、もどかしい日々を過ごしました。

 ゴールデンウィークの帰省を諦め、夏休みにも諦め…。

 家に一人きりになっている母をいくら心配しても手が届かない歯痒さに、物理的な距離とは残酷なものだとあらためて感じました。

 そんな憤りを洩らす私に、電話の向こうで母は言いました。

 「それでも、おんなじ空の下にいるんだから…。あんたが言ったんだよ。」

 そうだった…!

 そして、覚えてくれていたんだ…。

 とは言っても、来年の夏には一直線に飛んで、本当に繋がっている一つの空だと、もう一度確かめておかなければ気が済まない思いでいます。