日々のあれこれたどり着いた視点

 孫がもうすぐ一歳になります。

 娘が毎日のように写真や動画を送ってくれるので、日々の成長をほとんど見逃すことなく、目を細めて見守ってきました。

 娘が生まれた頃は、セクハラやマタハラなんて言葉はもちろん、そんな態度には問題があるという意識も浸透していませんでした。

 職場に産休を申し出るのも、一年間の育休を希望するのも、罪を告白してでもいるかのように後ろめたかったものです。

 育休中に二人目を考えていることが話題になったときには、明らかに歓迎していない様子で、嫌味を言われました。

 それから30年経った今はどうでしょう。

 あのとき嫌味を言った上司も、気遣わしかった同僚も、どこで何をしているのか知りません。お互いの幸せを願う必要も、当然ありません。

 一方、あのとき生まれてきた無力だった娘は、ずっと私に寄り添い続けてくれました。

 よき理解者として、頼りにすることもあります。

 毎日の張り合いになるような、可愛らしい姿を届けてくれます。

 意識の改革が進んでいる今でも、女性にとって出産や育児のリスクは大きくて、周囲の理解が得られず辛い思いをしている人が多いと聞きます。

 でも、これから生まれてくるのはただの無力な新生児ではありません。自分の人生に彩りをくれる、可能性の種です。

 自分の人生にとって、隣の席から飛んできたコショウの粉くらいの影響しか及ぼさない「誰か」にとっての不都合などに、気を遣う必要はないのです。

 何十年か先の自分の人生に、どんなメンバーがいたら楽しいかな…、幸せかな…、と考えてみてください。

 100年にも満たない人生の中で、今、いちばん大切にしなければならないものが見えてくるはずです。

子どもたちのこと2004年エッセイ集より 歳時記

 暑い夏の日の午後、頬に汗を伝わせて子どもが帰って来た。

「かき氷が食べたい。」

の声に、台所の隅からかき氷器を持ち出す。

 白く眩しく削げ落ちてくる氷には、「削り氷」という名がふさわしいと思いながら、手を休めることなく削り続ける。驚くほどに顔を近づけて、嬉しそうに待っている笑顔の期待に応えなければならないから。

 器に山盛りになった「削り氷」に自分で青いシロップをかけて食べ始めた。ひと口ほおばると、その口は真一文字から、みるみる両端が上がっていく。

 ただかき氷器のハンドルを回しただけなのに、その顔を見ていると、親として子どもの幸せのために大きな尽力をした気分になってくる。

 「削り氷」は、清少納言の「枕草子」にも出てくるように、もう千年も前からあった文化らしい。ただ、当時は、今のように一般庶民の食べ物ではなかったと聞いた。

 暑い夏に、子どもの体を心地よく冷やしてあげたいと思うのは、今も昔も変わらない親の願いだろうに。

 暑いと言えば、涼ませてあげたい。

 寒いと言えば、温めてあげたい。

 「お腹が減った。」と言えば、お腹いっぱい食べさせてあげたい。

 親が子に願うのは、そのくらいの幸せを喜ぶ笑顔だけで十分なはず。

 なのについ、もっともっとと、いろんなことを願ってしまうのは、そんな小さな願いが簡単に叶うようになってしまったからなのかな。

エッセイ集「これはきっとあなたの記憶」(2004年)より

*加筆しました

日々のあれこれ

 昨日、洗濯機のフタを開けたら、雪景色だった。

 洗濯物の底から、メモ帳の表紙と半分程残った用紙の束が出てきた。多分、再生紙で、他は見事にこなごな…。

 そしてそれは、息子が仕事中にいつもシャツの胸ポケットに入れて、かなり頼りにしていたものだったらしい。

 息子の部屋から拾い上げたシャツを無造作に洗濯機に放り込んだ手前、責任を感じてひたすら謝った。私が落ち込みながら、紙くずの処理に追われているのを気遣ったのか、自分にも責任の一端があると思ったのか、怒るでもなく責めるでもない反応に少しホッとした。

 網戸の向こうからは、ご近所の声が漏れ聞こえてくる。

 小さな子どもたちがケンカをしている。

 親御さんが叱っている。

 思いどおりにならなくて泣いている…。

「泣いて何とかなるんだったら、おれも泣きたいよ、あんな風に…。」

 大人な対応だなぁと思ったけど、それが本音だよね…。

 ごめんよ〜〜!

 ご近所の声は、なおも続く。

 昔はうちもあんなだったよなぁ。

 子どもが3人もいて、それぞれが個性的だったんだもの。

 ひと休みして、大人だけの家庭というのも穏やかでいいなぁ…。

 午後、娘が孫を連れて遊びにきた。

 よちよちと歩きながら、興味のあるものを手当たり次第に触ろうとする。

 その一挙一動に目を細めたり慌てたりする大人。

 思い通りにさせてもらえないと不満そうな声を上げる孫。

 いつの間にか、賑やかなご近所の仲間入りしている!

 子どものいる生活も、たまにはいいなぁ…。