同じ空の下母の一世紀

 母は言う

 ◯◯さんも、△△さんも、あんたが戻って来るのを待っていたんだよ

 聞いていると、近所のたくさんの人たち…中には、思いも寄らない人の名前まで上がる

 「⬜︎⬜︎ちゃん(わたしの名前)もうすぐ帰って来るね」

 「楽しみだねぇ」

 分かってる

 その人たちは私が戻って来るのを待っていたんじゃない

 私が戻って来て喜んでいる母を早く見たかったんだよね

 そんな人たちに囲まれて、これまで見守ってもらっていたことに感謝しています

同じ空の下

 こちらへ来てまず思うのは、「空が大きいなぁ」

 晴れた日には、真っ青なお椀をすぽっと被せられたみたいに

 それでも、私の欲は飽くことを知らない

 朽ちかけた木蓮の大木のために前庭の日当たりが悪いのが気になっていた

 幹に大きな穴が空いていて、雪や風で倒れる心配が常にあった

 大きな葉は農作物の生育にも影響するほどの日陰を作り、秋の落葉で用水を詰まらせた

 そんな訳で、家族の同意…というか大賛成を得て、伐採に踏み切った

 腕に覚えのある息子や甥が、力と知恵を持ち寄って完遂してくれた

 おかげで、私の空は更に大きくなった

 樹齢50年以上の、もしかしたら“大先輩”

 人間の都合ばかり言ってごめんなさいね

 でも、大きな空に伴うたっぷりの日差しは、足下でひっそりと伸び悩んでいた小さな草花を一気に元気にしてくれた

同じ空の下

 北へは北上、南へは南下と言います

 南の地方に住んでいらっしゃる方、なんかごめんなさい

 北半球を上に描いた一般的な地図が要因だと思われますが、北へ北へと進むとグーグルマップの私の位置情報も、どんどん上へと移動して行きました

 フェリーに乗って、日本海をまっしぐらに北上しました

 新潟港から小樽港まで16時間半の旅

 早朝4時半に着港して、更に北上

 旭川市には午前8時半という、この一日は余裕をもっていろいろなことが出来そうな時刻の到着でした

 荷解きをしたり、母に食べさせたいと考えていた料理を作ったり、早速庭に手を入れて花を植える計画を立てたりと、目まぐるしい一週間を送りました

 遂に手にしたおのぞみの結末

 ここからは北海道での生活をメインに発信していきます

 庭いじりを楽しみながら

 気候の変化に戸惑いながら

 田舎暮らしの不便さを思い知りながら

 近くの観光スポットを訪れたりもしたいな

 よろしければ、今後もどうかお付き合いください

向こうを出発するときには、夜明けの大きな虹が見送ってくれました