喪失の痛み
前回の投稿に引き続き、母の思い出話を…
いよいよ明日妹に会える、という日の夜
母がこれまで聞いたことのなかった話を始めた
母の母親の葬儀の後、火葬場で
小さな弟が泣き止まない
「かあちゃーん、かあちゃーん」
母と妹は、そんな弟を連れて外に出た
弟を負ぶったまま、周辺の畦道を散歩する
それでも弟は泣き止まない
「かあちゃーん、かあちゃーん」
火葬場の煙突から黒い煙が上がっている
弟は泣き止まない
「かあちゃーん、かあちゃーん」
「あの煙はかあちゃんだから、みんなで呼んでみよう かあちゃん、返事してくれるかもしれないよ」
三人で「かあちゃーん! かあちゃーん!」
ここで母は笑った
「でもかあちゃん、返事するわけないからさ」
「それで畑の真ん中で、三人で『うわーん、かあちゃーん、かあちゃーん』って泣いたのさ」
最後の言葉は声を詰まらせ聞こえなかった
私も声を出すことも出来ずにただ頷いていた
母の思い出話は、これまで書いてきたように早く両親をなくしたことで苦労はしたが、それを乗り越えて来たという話が圧倒的に多かった
(よろしければ、道のりをはじめ「母の一世紀」というタグの付いた文を辿ってください)
こんな風に純粋にそのときの喪失の悲しみを聞いたのは初めてだったんじゃないかな
話すだけの気持ちの余裕がやっと出来たってことかな?
この機会に、忘れていたことを思い出したとも十分に考えられるけど…
とりあえず、母よりも早くは逝けないよな…