感じ取る季節
思い出を文にしようとすると、ついつい冬のことが多くなってしまします。
でも、誰もが知っている通り、北海道には素晴らしい夏があります。
いつまでも肌寒くて実感が薄いけれど春もありますし、短いながらも秋もあります。
それでも、冬という季節の印象が強いのは、こちらでは体験できない寒さや、降雪への懐かしさかもしれません。
私にとって、冬は「感じ取る季節」でした。
ピリピリと痛いくらいに冷えた空気。風までも凍ったように何も動かず、静まり返っている朝の緊張感。
太陽の高度は低く、午後2時だというのに西に傾いて見えた寂しさ。
窓の外に降りしきる雪を眺めながら、ストーブの上で薬缶のお湯がしゅんしゅん鳴っているのを聞いて、家の中の暖かさに言いようのない幸せを感じた休日。
子どもの頃は、クリスマスやお正月が近づいてくる嬉しさで、家の中まで凍てつく日々が、赤や金色の宝物が近づいて来る合図のように感じていました。
今では、冷え込んだ朝に窓の外が白く見えてレースのカーテンを開けても、雪景色ということはほとんどありません。
でも、ピンと張りつめるような冷気のせいか、植物が朽ち始めた匂いのせいか、こちらに住んでいても
「冬が来るんだなぁ。」
と感じる瞬間はたくさんあり、やはり冬は「感じ取る季節」なのです。