春の休日
向かいの家では、幼なじみの大きな鯉のぼりがゆうゆうと泳いでいました。
私は家の周りや田んぼのあぜ道を歩き回り、溶け残った雪を割ってふきのとうが顔を出すのを手伝っては、「春の精」気分を味わっていました。
ゴールデンウィークという言葉はその頃からありましたが、土曜日は休みではなかったし、4日も祝日ではなかったので、連休を実感できたことはあまりありませんでした。
家族は田植えの準備で忙しい時季で、出かける予定はないものだと思っていました。
それでも、拘束されない自由な時間がたくさんあるのが嬉しくて、休みの日はこうした“散策”をしたものです。
多分、私はこれを「春探し」と名づけていました。待ち遠しかった春が来たんだと実感したかったのです。
肌寒い空気の中に、わずかでも日差しの温もりを感じ取ろうと、縁台に座ってじっと息を凝らしていたこともありました。
昨今は、この頃に限りなく近いゴールデンウィークを過ごしています。
近所の庭を眺め、公園を散歩して、思わぬ発見を未熟な腕でカメラに納めます。のどかなこの地域では、“同胞”を各所で見かけます。
そこだけ見ていると、実に平和な世の中なのに…。
もうすぐ、実家のある地域から、桜の便りが届くはずです。