日々のあれこれ母の一世紀

 ある日、父が言った

 「母さんには、前の旦那のところに残してきた子どもがいて、まだその子のことを気にかけているんだろう もしかしたら、父さんの知らないところで、連絡を取り合っているのかもしれない」

 一般的な家庭に見えても、それぞれの事情を抱えているもの

 以前から書いてきたように、父が再婚なのは小さい頃に知ることになったのだが、母にもそんな過去があったのか…

 隠していたようでもなかったので、私が成人してしばらく経ったこの日まで、触れる必要もなかったのだろう

 どんなきっかけだったか忘れたが、そう話した父は寂しそうだった

 後に母から聞くことになった

 初めの結婚は辛いものだったこと

 夫から毎日のように暴力を受けたこと

 男の子が生まれたが、連れて出ることができずに、その家に置いてきたこと

 そしてその子は、幼いうちに亡くなったと、知らされていたこと

 ここに来たときは、抱くこともできない我が子を思いながら、ねえちゃんを育ててきたのかな… 切なさが込み上げる

 センチメンタルにそんなことを思っている私とは裏腹に、母はどこか吹っ切れているように、遠い思い出話として話した

 あんなに仲がいいのに

 毎日、一緒にいたのに

 それを話すことなく、過ごしてきたのか

 心の奥にある柔らかい部分

 そこに触れない父の優しさに守られて、母の痛みは、ぶり返すことなく癒えていったのかな

 あるとき思ひ立ちて… (「仁和寺にある法師」を思い浮かべた方 正解です!)

 母が歩んできた道をまとめてみようと思いました

 北海道の里山に住む、一人のおばあさんの人生に関心を抱かれた方がいらっしゃいましたら、新しい風 から遡りながら、“母の一世紀”というタグのついた文をお読みください

日々のあれこれ母の一世紀

 少し大げさでした  すみません

 淡々と投稿を続けるのも、結構、性に合っているのですが、ときどき変化が欲しくなります

 今回、タグの種類を一つ増やしました

 ね、細やかなことでしょう…

 “母の一世紀”としました

 これも、少々大げさです

 今年88歳になった母には、一世紀は10年以上も遠い金字塔です

 読んでくださる方は、“ざっくりと”で、ご理解ください

 これまでの投稿にもタグを付けて、辿れるようにしましたので、過去記事も読んでみてください

 母のここまでの人生が、決して穏やかなものではなかったことは、度々書いてきました

 それでも、私たち子どもや、孫、そして今、ひ孫たちにも、溢れるほどの愛情を注ぎ、幸せを願ってくれています

 その背景にある、子どもの頃の、思い出したくもない経験や、父の元へ後妻として来る前に、辛い結婚があったことを私が知ったのは、すっかり成人してからでした

 “波乱万丈”なんて言葉を使ってしまうと、またしても大げさになってしまいそうなので避けますが、自分の境遇を淡々と受け入れて、その中で幸せを見つけながら、精一杯生きてきた母の足跡を、他の誰かにも知って欲しくて、新規のタグを使ってまとめることにしました。

 上記の、子どもの頃の話、一度目の結婚については、まだ文として上げていません  随時と考えていますので、ご了承ください

初めて、二つ同時に花芽をつけたキンセイマルが…
咲きました!

同じ空の下母の一世紀

 父さん、どうする?

 母さんは、父さんの願いをすっかり叶えたけど

 ここ数年の間に、何度か聞かされた、母の思い出話

 嫁いできて間もないある日

 その日の仕事を終えて帰ろうとしたとき、父さんが物置小屋の陰で手招きしていた

 何かと思って行ってみると、突然抱きしめられた

 俺にはもう、お前しかいない

 祖父母がいて、舅も姑もいて、亡くなった前妻の子どもまでいる家

 子育てを手伝ってもらっていた身内まで、あれこれと理由をつけて去っていった

 こんな家に来てくれるのは、きっとお前が最後だ

 俺に不満があるなら、いつだって出ていってもいい

 でも、家族への不満なら、どうか辛抱してほしい

 この言葉を支えに、長い年月を乗り越えてきたという(関連

 四人の年長者を送り終えたときには、とうに還暦を過ぎていた

 一歳から育ててきた姉までも、先に送ることになった( 関連 勝手に使命感

 母さんは、あの日の約束を全部守ったよ

 そんな母さんに、父さんは何をしてあげられるの?

 ちゃっかり、自分まで送ってもらっちゃって…

 母の思い出話は続く

 父さんは、本当に優しかった

 穏やかで、考えが深くて、困った人はみんな父さんに相談に来たんだよ

 みんなが、父さんを立派な人だって言ってくれて、誇らしかった

 父さんをおいて、私が先にいくことにならなくて、本当に良かった

 そうか

 お返しは、ずいぶん前から、少しずつしてあったんだね

2回目の登場 父が大好きだった木です