カムフラージュ

子どもたちのこと2004年エッセイ集より

 虫採りが大好きな女の子は、やがて3人の子どものお母さんになった。

 虫採りが大好きだったお母さんの子どもたちは、みな虫採りが大好きな子に育った。

 夏が近づくと、子どもたちの血は騒ぎ出す。

 もちろん、お母さんの血も騒いでいるが、何となく照れくさいので、知らん顔をしながらそっとウキウキしている。

 いよいよ夏が来て、子どもたちにせがまれると、

「仕方がないねぇ。」

と言いながら、予め目星を付けておいた場所へと出かけて行く。

 実家に戻っているときだと、水を得た魚。裏山は自分の“庭”だもの!

 幸いにも、幼い頃とほとんど姿が変わっていない裏山は、

「久しぶり、よく来たね。」

と、優しく迎えてくれる。


 図鑑や絵本を参考に環境を整えて、飼ってみたこともある。

 大きな水槽に土を入れ、草を植え…。

 当然、自分が子どもの頃よりも上手くできたし、根気よく世話を続けられたので、産卵させることにも成功した。

 嬉しくて、底土の中に一部分だけ見えている卵を毎日のように眺めていたのは…。

 翌春、冬越しをした土から出てきた小さな小さなキリギリスに歓喜の声を上げたのは…。

 脱皮を繰り返して、少しずつ大きくなっていくたびに、家族のみなに報告していたのは…。

 もちろん、3人の子どもたちのうちの誰かではなかった。

エッセイ集「これはきっとあなたの記憶」(2004年)より

*加筆しました


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