ひとつ残したもの
最初に手がけた、一番古いアルバムに貼られていたもののほとんどは、祖父が撮ってくれたモノクロ写真でした。
私は、小さい頃から、このアルバムが大好きで、写真を撮ってもらうたびに好きな順に貼り替えたりして、気ままに扱っていました。
表紙も、中の台紙も汚れて、擦り切れているところもありましたが、このアルバムだけは、ばっさりと切り捨てるのが忍びなくて、30cm角の小型アルバムにまとめることにしました。
お気に入りだった表紙の写真を撮って、1ページ目に貼り、20枚ほどの写真を選んで収めました。
こんな時代ですから、スマホで撮ってデータとして残すという効率的な方法もあって迷いました。
でも、私の根本にあるのはアナログ世代の価値観です。ヨレた印画紙とセットになった思い出を、手元に置いておく方を選びました。
このくらいのサイズなら、いつか本気で終活をしようと思ったときに、何とでもなるでしょう。
こうして、4~5冊あった1包目は、小型アルバム1冊に変わりました。
若い頃の“証拠隠滅”も完了して、少し身軽になった気がしました。
でも、それからが本番でした。
子どもたちの可愛い写真の大半を切り捨てるというのは、とても勇気のいることに思えたからです。