仕事をしていると、相手は人なのですから、苦情を寄せられて、それに対応するのは使命のようなものです。
それにしても、苦情を言う人というのは、してもらったことよりも、してもらってないことを数えがちです。そして、それが自分にとっていかに損であったかを語り続けます。
たしかに世の中を見回すと、「得」「損」という文字が溢れていて、いい大人たちがそんな単純な基準に、いいように振り回されているのではないでしょうか。
政府も企業も、「お得、お得」と煽ります。得をすることが善である、得をしないことや損をすることが、愚かだとでもいうように。
ある男の子の話を聞きました。
運動会で、数名で一組になって棒を持って走る、「台風の目」という競技をすることになり、メンバー決めをしたときのことです。
当然、走るスピードが近い者同士でチームをつくることを基本に、戦略が立てられていきました。
クラスには、大勢の人の前では緊張感が強くなり、ときには動けなくなってしまう子がいたそうです。当然、その子がどのチームに入るかはみんなにとって気になるところでした。
そのとき、真っ先に「ぼくがこの子と一緒に走るよ。」と名乗りを上げたのが、前述の男の子でした。その子を慕う子が、そのチームに集まり、あっさりとメンバーが決まりました。
練習から本番まで、その男の子は友だちを励まし続け、はじめは不安そうにしていた子も、楽しく運動会に参加できたようです。
その男の子の50m走のタイムは9秒台で、クラスの中でも速い方だったそうです。
世の中の動きに絶えず目を光らせて「少しでも得をしよう。」と、周囲の自分への評価に一喜一憂しながら「優越感に浸りたい。」と考えがちな今の大人たち。
空気を全く読まずに、損だとか得だとか考える間もなく、思い立った使命感だけで、素晴らしいことをやり遂げてしまう子どもたちに、はっとさせられることはたくさんありそうです。